夕方、西新宿でeelleリハーサル。新曲2曲、順調に仕上がり中。終了後は串カツでおつかれさま。しかしこのバンド、いよいよ次のフェーズに入ったような気がする。

傷口がまぶたのように開く。眠っていた痛みが鼓動し始める。静寂の中、赤い景色が揺れている。

無頼な独人となりて、この暗鬱な鈍色の空に俺の赤い心臓を高く差し上げよう。そして一枚の白い紙について語りきるのだ。しかし白い紙はまだ黙り込んでいる。かすかな息をしているかもしれない。しかし俺が語るたびに滲む赤が広がり、無垢な白は過去を飲み込んでいく。

旋律を載せたハチドリの羽音が遠い窓辺を、風洞化した胸元を揺らしている。そのひとコマ毎に微動しながら未完のオブジェが白黒フィルムの陰影で語り始める。

影は沈黙のうちに輪郭を歪ませ、滲む光がフィルムを焦がしていく。言葉になりきれない記憶の破片がハチドリの羽に乗り、遠くへ飛んで行く。

暗愁の傷つかぬがままに、無為に過ぎていく時間を黙って葬送するばかり。

大阪にいる。インバウンドな人々で溢れかえる駅を足早にヘイ・タクシー。鈍色の空に伸びるビル群を尻目に地下深く。寒い。

どこかの空に、七色ではない虹が架かる。夜空の星々を映した銀河の虹。誰かのファンタジーが翻訳された夢幻の虹。風のささやきに揺らめく水蒸気が色を帯びた透明な虹。そんな虹に背を向けて全力で走ったはずなのに、ゴールはどこにも無かった。努力はしたけれど手のひらに残るものは何も無かった。一体何を求めて疲れ果てたのだろう、虚しさを抱えたまま、それでもまた朝が来る。昨日と同じ景色、昨日と同じ空気、何かが変わるわけでもなく、ただ時間だけが進んでいく。そしてまたどこかの空に、七色ではない虹が架かる。

遠い街での仕事を終え、最終の新幹線で東京に向かっている。どたばたの発車間際、ビールしか買えなかった。以前同じような状況で車内販売のおねーさんに「何か食べるものはないですか」と尋ねたところ、次の停車駅と連絡を取って弁当を入手してもらい大感激したことがあった。車内販売が無くなったのは本当に残念だ、ああ、腹減った。