のぞみ94号東京行き3号車6番E席に座っている。荷物棚には大きなキャリーケースがいくつも並んでいる。押し殺されたような静けさの中で後方から赤ん坊の泣き声、前方から猫の鳴き声。本来ならば3号車は自由席のはずだがこの年末年始から全席指定に変わったらしい。車両ポジショニングに若干の違和感を感じながらぼんやりと外を眺める。古びた柿色の空に舞う、砂のような時間。この世界がさらさらと、車窓から遠ざかっていく。