目白通りに面するこの窓から、鈍色の空を眺めている。脳の奥底で微かに回る音、記憶の粒が擦れあう音。夢幻のプロペラが回っている。現実と幻想の境をゆるやかに回転し、どこにもたどり着かず、しかし確かに世界をかき混ぜているような響き。形を失ったものたちがその羽根に触れ、別の形に変わっては消えていく。通りすぎた雨の匂い、誰かの言葉、何もかもが螺旋の中で攪拌され、まだ見ぬ明日へ押し出されていく。僕はただその回転の縁に立ち、夢と現のあいだで消えていくものたちの淡い残響を聴きながら、この世界から僅かにずれていく。
これを聴いていた。

Julian Lage『Speak To Me』(2024)
